ChatGPT などの生成 AI のアカウントを社内で共有してよいか
個人向けの ChatGPT は、利用規約でログイン情報を他人と共有することを禁じています。法人向けの契約も 1 つのアカウントは 1 人だけが使う前提です。複数人で使うなら、法人向けプランで人数分のアカウントを配ります。
ChatGPT の個人向けのアカウントを社内の複数人で使い回すことは、OpenAI の利用規約が禁じています。Claude を提供する Anthropic の個人向けの規約も同じです。複数人で使うなら、法人向けプランで 1 人に 1 つずつアカウントを用意します。
利用規約が定めていること
OpenAI の利用規約は、ChatGPT などの個人向けのサービスに適用されます。「登録及びアクセス」の節の「登録」の項は、次のように定めています。
お客様は、アカウントの認証情報を他人と共有したり、アカウントを他人に利用可能にしたりしてはなりません。また、お客様はご自身のアカウントで発生するすべての活動に責任を負います。
認証情報とは、ログインに使う ID とパスワードのことです。違反すれば、OpenAI はアクセスを止めたりアカウントを削除したりできると、同じ規約の「終了」の項にあります。OpenAI のヘルプも、アカウントは作った本人専用で、ほかの人には各自でアカウントを作るよう案内しています。
会社が契約した個人向けのプランにも、この利用規約が当てはまります。同じ「登録」の項は、団体のためにアカウントを作る人に、その団体に代わって規約に同意する権限を求めているからです。法人向けの契約(OpenAI サービス契約)は、個人向けのサービスには適用されないと冒頭で断っています。
その法人向けの契約も、共有を認めてはいません。3.1 は、ログインの認証情報を「複数のユーザー間で共有しないものとします」と定めています。3.2 は、利用者のアカウントが「当該エンドユーザーによってのみ使用される」とします。
Anthropic の個人向けの規約(Consumer Terms of Service)も、第 2 条で次のように定めています。
You may not share your Account login information, Anthropic API key, or Account credentials with anyone else.
ログイン情報などを他人と共有してはならない、という意味です。同じ条は、アカウントを他人に使わせることも禁じています。
この規約の冒頭には、法人向けの規約は、個人や団体による Claude.ai・Claude Pro の利用を含まないとあります。会社が Claude Pro を買っても、個人向けの規約の対象です。
共有すると起きること
誰の会話か分からない
1 つのアカウントを複数人で使うと、会話はすべてそのアカウントのものとして残り、どの会話を誰が入力したかは区別できません。それでも規約は、アカウントで起きたすべての活動の責任を、登録した側に負わせています。不適切な入力があっても、会社が示せるのはどのアカウントからか、までです。
辞めた人が履歴を読める
二段階認証を設定していなければ、パスワードを知っている人は、それが変わるまでログインできます。辞めた人がログインすれば、履歴が消されていない限り、辞めたあとにほかの人が入力した会話も読めます。
止めるには、パスワードを変えて残る全員に配り直し、ほかの端末からもログアウトさせます。ChatGPT では、設定のセキュリティの項目から、すべての端末をまとめてログアウトさせられます。ほかの端末に反映されるまで最大 30 分かかることがあります。この運用の負担は退職者が出るたびにパスワードを変える運用の限界にまとめています。
入力した情報の扱い
個人向けの ChatGPT では、入力と出力を OpenAI がサービスの改善などに使うことがあります。学習に使わせない手続きは、利用規約の「使用停止(オプトアウト)」の項にあります。Anthropic の個人向けの規約も、アカウントの設定で止めない限り学習に使うことがある、としています。共有アカウントでは、この設定を変えられる人がログインできる全員に広がります。
ここに個人情報保護法の論点が重なります。個人情報保護委員会の「生成 AI サービスの利用に関する注意喚起等」(令和 5 年 6 月 2 日)は、事業者に 2 つの確認を呼びかけています。
1 つは、個人情報を含む質問や指示(プロンプト)を入れるなら、利用目的の範囲内かどうかです。もう 1 つは、本人の同意なく個人データを入れるなら、提供する事業者が「当該個人データを機械学習に利用しないこと等」です。入れた個人データが回答を出す以外の目的で扱われると、「個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある」からです。
誰でも学習の設定を変えられる共有アカウントでは、この確認を会社として保ちにくくなります。
法人向けプランで変わること
OpenAI の法人向けプランは、ChatGPT Business と ChatGPT Enterprise です。Anthropic では、Claude の Team プランと Enterprise プランです。どれも、誰が使えるかを会社の管理者が決めます。
| 使い方 | 人を外す方法 | 本人以外で会話を見られる人 | 学習への利用 |
|---|---|---|---|
| 個人向けのアカウントを共有 | パスワードを変えて配り直し、全端末をログアウトさせる | ログインできる全員 | 止める手続きをしない限り使われうる |
| ChatGPT Business | 管理者がメンバーから外し、その時点で入れなくなる | 管理者(閲覧・書き出し・削除) | 初期設定では使わない |
| ChatGPT Enterprise | 管理者がメンバーを管理する | 管理者が専用の仕組みで会話の記録を取り出せる | 初期設定では使わない |
| Claude の Team・Enterprise | 管理者がメンバーから外し、その時点で入れなくなる | 最上位の管理者(プライマリオーナー)が会話を含むデータを書き出せる | 初期設定では使わない |
表のように管理者が会話を見たり書き出したりできるプランでは、そのことを利用者が知っている必要があります。OpenAI サービス契約の 3.2 も、管理者の操作に必要な同意を利用者から得ておくよう、会社に求めています。
会社のメールアドレスで作った個人向けのアカウントは、会社が法人向けプランを使っていると、会社の組織に移されることがあります。OpenAI の利用規約では「企業のドメイン」、Anthropic の規約では「Business Domains」の項です。移されたアカウントは、入力した内容も含めて管理者が扱えるようになりえます。
ChatGPT と Claude は法人向けプランで人数分のアカウントを作れるので、共有アカウントを個人アカウントに分けられないケースには当たりません。費用を理由に分けない判断も、規約が共有を禁じているので取れません。
共有をやめる順序
- 共有しているアカウントを書き出します。サービス名、パスワードを知っている人、入力してきた情報の種類を並べ、個人データを入れてきたなら学習の設定も確かめます。
- 使う人の数だけ法人向けプランのアカウントを用意し、管理者を決めます。個人向けのアカウントが組織に移されうることは、利用者に先に伝えます。
- 共有していたアカウントのパスワードを変え、ほかの端末からもログアウトさせてから、使うのをやめます。二段階認証を複数人のスマホに設定していたなら、共有アカウントの二段階認証を複数人で使うときの問題と選択肢を参考に設定し直します。
よくある質問
ChatGPT のアカウントを社内で共有してよいですか
個人向けの利用規約は、ログイン情報を他人と共有することと、アカウントを他人に使わせることを禁じています。法人向けの契約も、1 つのアカウントは 1 人だけが使う前提です。
会社が料金を払っていれば共有できますか
個人向けのプランなら、個人向けの規約の対象です。Anthropic は、団体による Claude Pro の利用も法人向けの規約には含まれないと明記しています。複数人なら法人向けプランを使います。
共有アカウントに入力した内容は学習に使われますか
個人向けでは、止める手続きをしない限り使われることがあり、その設定はログインできる全員が変えられます。ChatGPT と Claude の法人向けプランは、初期設定では使いません。
辞めた人を共有アカウントから外すには
パスワードを変えて残る全員に配り直し、すべての端末からログアウトさせます。ChatGPT Business や Claude の法人向けプランでは、管理者がメンバーから外した時点で入れなくなります。
生成 AI に個人情報を入力してもよいですか
個人情報保護委員会は、利用目的の範囲内かを確かめるよう呼びかけています。本人の同意なく個人データを入れるなら、提供する事業者が機械学習に使わないことなども確かめます。
Junify の場合
- 人手で続けると
- 共有アカウントを安全に使い続けるなら、誰がパスワードを知っているかの一覧を保ち、人が入れ替わるたびに変えて配り直し、同じ ID で誰が操作したかを別に記録することになります。
- Junify なら
- ChatGPT や Claude は規約が共有を禁じているので、Junify に登録して共有せず、人数分のアカウントに分けます。Junify が受け持つのは、SNS の公式アカウントのように 1 つしかないアカウントです。導入時に変えたパスワードは担当者に渡らず、使うたびに担当者のスマホで本人確認をします。辞めた人の利用は管理者が止めるだけで、誰が・いつ使ったかは人ごとに残ります。
参考資料
- OpenAI「利用規約」(2026 年 1 月 1 日発効)
- OpenAI ヘルプセンター「OpenAI アカウント共有ポリシー」
- OpenAI「OpenAI サービス契約」(2026 年 1 月 1 日発効)
- OpenAI「OpenAI におけるエンタープライズプライバシー」
- OpenAI「ChatGPT Business」
- OpenAI Help Center「Managing members, seat types, and roles in ChatGPT Business」
- OpenAI Help Center「How do I log out of all of my devices?」
- Anthropic「Consumer Terms of Service」(2025 年 10 月 8 日発効)
- Anthropic ヘルプセンター「Team プランと Enterprise プランでメンバーを管理する」
- Anthropic Privacy Center「Export your organization's data」
- Anthropic Privacy Center「私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?」
- Anthropic「プランと料金」
- 個人情報保護委員会「生成 AI サービスの利用に関する注意喚起等」(令和 5 年 6 月 2 日)
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