Bitwarden と Junify の違い、法人で共有アカウントを使わせるときの選び方
社員が自分のパスワードを保管し、信頼する同僚と共有するなら Bitwarden で足ります。共有アカウントを担当者に見せずに使わせ、外れた人をパスワードを変えずに止めたいなら Junify が合います。分けて併用もできます。
Bitwarden は、社員が保管庫(パスワードを入れておく場所)にパスワードを保管し、会社の中で共有して自動で入力するパスワードマネージャーです。社員が自分のパスワードを管理し、信頼する同僚と共有するなら Bitwarden、共有アカウントを担当者に渡さずに使わせるなら Junify が向いています。
Bitwarden が担うこと
法人向けの契約プランは Teams と Enterprise です。どちらにも操作の記録、社員をまとめるグループ、認証アプリのコードを作る機能があります。会社の ID 管理サービス(Okta、Microsoft Entra ID など)のアカウントで Bitwarden にログインする機能は、Enterprise だけにあります。管理者が全員に守らせる設定も同じです。
共有は、会社の契約(画面では組織)の中のコレクション(項目をまとめて共有する単位)ごとに行います。管理者は、メンバーやグループごとに、見るだけ・編集もできる・コレクションを管理できる、などの権限を選びます。見る権限と編集の権限にはパスワードを隠す版があり、隠しても自動入力はできます。
操作の記録には、項目を開いた、パスワードを表示した・コピーした、自動入力した、といった操作が、日時・使ったアプリ・接続元・メンバーつきで残ります。
このほか、次の機能があります。
- パソコンとスマホのアプリ、ブラウザーの拡張機能のどれからでも保管庫を使う
- 認証アプリに出る使い捨てのコードを項目の中で作り、ブラウザーの拡張機能で自動入力する
- Enterprise では、SSO(一度のログインで複数のサービスに入れる仕組み)のないサービスも、ID 管理サービスの画面から開けば入力と送信を任せられる
共有アカウントで、Bitwarden の範囲の外に残ること
共有アカウントを担当者に使わせるときは、次の 5 つが問題になります。初めの 3 つは公式ヘルプ自身が書いている限界、4 つ目は公式ヘルプでは確かめられなかった点です。
隠したパスワードも、共有したものとして扱う
公式ヘルプは、パスワードを隠すと簡単なコピーはできなくなるが、相手がパスワードを手に入れることを完全には防げない、と書いています。そのため、隠したパスワードも共有したパスワードと同じに扱うよう求めています。各社の比較はパスワードを見せない共有設定の記事にあります。
外した人の端末には、写しがしばらく残る
組織から外すと、その人は項目を開けなくなります。ただ、オフラインの端末には組織の項目を含む読み取り専用の写しがあり、一部のアプリでは外した後もしばらく読めます。公式ヘルプは、悪用が心配なら、外すときにその人が使えたパスワードを変えるよう案内しています。手順はパスワードマネージャーで共有していた人が辞めるときの記事にあります。
記録の多くは担当者の端末から送られる
操作の記録の多くは、担当者の端末のアプリが 60 秒ごとに送ります。公式ヘルプは、通信が切れたり、アプリが送らないように書き換えられたりすると記録できないと書いています。そのうえで、セキュリティや法的な調査、監査の目的には足りない場合があるとしています。
ログインした後のサービスにも及ぶか
記録に残るのも、人を外して閉ざされるのも、Bitwarden の中です。自動入力の後にサービスの画面で何をしたかを残す機能、ダウンロードを止める機能、サイトのログインしたままの状態(セッション)を終わらせる機能は、パスワード管理の公式ヘルプでは確かめられませんでした。
招くには、確認済みのメールアドレスが要る
会社のアドレスがないパート・アルバイトに使わせるなら、受信できるアドレスを別に用意します。
Junify が担うこと
担当者は、パソコンの画面に出る QR を自分のスマホの Junify アプリで読んで本人確認をし、共有アカウントを選びます。メールアドレスがない人も使えます。ID とパスワードは Chrome の拡張機能が入力し、担当者の画面には出ません。
ログインは Chrome のシークレットウィンドウ(すべて閉じると履歴とクッキーが消えるウィンドウ)で開きます。担当者はパスワードを受け取らないので、ブラウザーにもパスワードマネージャーにも保存されません。サービスのクッキーも、いつもの Chrome には入りません。管理者が遠隔で終了すればシークレットウィンドウがすべて閉じ、そのパソコンのログイン状態も消えます。使っている途中で許可した場所や IP アドレス(接続元を示す番号)を外れても、そのアカウントのタブを閉じ、そのサービスのクッキーを消します。
管理者は、アカウントごとに使ってよい人を決めます(割り当て)。割り当てを外せば、その人は入れません。パスワードを見せていないので、人が外れるたびに変える必要はありません。誰が・いつ使ったかは一人ずつ残り、録画を AI に要約させることもできます。
ダウンロードはアカウントごとに許可・禁止でき、アップロードと印刷は検知して管理者に知らせます。認証アプリ方式の二段階認証のコードも Junify が入力します(SMS やメールのコードは対象外)。共有アカウントについては、Junify を Bitwarden の代わりに使えます。
Bitwarden と Junify を併用するとき
どちらに置くかは、そのパスワードを本人が知ってよいかで決めます。本人だけが使うアカウントは Bitwarden に、担当者に使わせる共有アカウントは Junify に置きます。
移すときは、サービス側でパスワードを変え、新しい値は Junify にだけ登録します。コレクションに残った古い項目は消します。変えずに移すと、隠す権限だった人も含めて、コレクションを使えた人がこれまでの値で入れるおそれがあります。
どちらが合うか
Bitwarden の欄は公式ヘルプの記述だけで書き、「確かめられなかった」は、できないという意味ではありません。
| 比べる点 | Bitwarden(Teams・Enterprise) | Junify |
|---|---|---|
| 担当者がパスワードを見るか | 権限で隠せる。項目の写しは担当者の端末にある | 見せない。保管庫にもブラウザーにも写しが残らない |
| 人を外したとき | 外したうえで、悪用が心配なら使えたパスワードを変える | 割り当てを外せば入れない |
| 誰が使ったかの記録 | 誰がどの項目を開いた・表示した・コピーした・自動入力したか(日時つき) | 誰が・いつ使ったかを一人ずつ。録画もできる |
| ログインした後の操作 | パスワード管理の公式ヘルプでは確かめられなかった | ダウンロードの許可・禁止、アップロードと印刷の検知 |
| ログインした後のセッション | Bitwarden の利用が止まる。サイトのセッションを終わらせる機能は確かめられなかった | Junify のウィンドウの中にある。遠隔で終了でき、場所・IP の条件を外れると閉じる |
| 二段階認証のコード | 項目の中で作り、自動入力できる | 認証アプリ方式のコードを入力できる |
| 使う人に要るもの | 確認済みのメールアドレスと Bitwarden のアカウント | スマホの Junify アプリと Chrome の拡張機能 |
| 使える端末 | パソコンとスマホのアプリ、ブラウザーの拡張機能 | パソコンの Chrome(本人確認はスマホ) |
Bitwarden だけで足りるのは、共有する相手が信頼している社員だけで、人が抜けるたびに共有のパスワードを変えられる会社です。使う人が全員会社のメールアドレスを持ち、記録が Bitwarden の中の操作で足りる場合や、スマホからも保管庫を使いたい場合もそうです。
Junify が合うのは、担当者にパスワードを渡したくない共有アカウントがある会社です。人の入れ替わりが多い、メールアドレスのない人も使う、ログインした後の操作やセッションまで管理したい、という場合も当てはまります。
よくある質問
Bitwarden の代わりに Junify を使えますか
共有アカウントについては使えます。担当者はパスワードを見ずにログインし、外れた人は割り当てを外せば入れません。社員が自分用に保管するパスワードは Bitwarden に残す、という分け方もできます。
パスワードを隠す権限で共有すれば足りますか
公式ヘルプは、隠しても相手がパスワードを手に入れることを完全には防げないとし、共有したパスワードと同じに扱うよう書いています。外した人が使えたパスワードは、悪用が心配なら変えるよう案内しています。
Bitwarden で誰が使ったか分かりますか
Teams と Enterprise の操作の記録で、誰がどの項目を見た・コピーした・自動入力したかが分かります。記録の多くは端末から送られるため、監査には足りない場合があると公式ヘルプは書いています。
Teams と Enterprise は何が違いますか
ID 管理サービスのアカウントでのログイン、全員に守らせる設定、招待リンクなどは Enterprise だけです。操作の記録、グループ、認証アプリのコードを作る機能はどちらにもあります。
Bitwarden と Junify は一緒に使えますか
使えます。社員が自分専用に持つパスワードは Bitwarden に、担当者に使わせる共有アカウントは Junify に置きます。移すときはサービス側でパスワードを変え、新しい値は Junify にだけ登録します。
Junify の場合
- 人手で続けると
- 共有アカウントを安全に使い続けるなら、誰がパスワードを知っているかの一覧を保ち、人が入れ替わるたびに変えて配り直し、同じ ID で誰が操作したかを別に記録することになります。
- Junify なら
- Bitwarden から外した人のアプリには組織の項目の写しがしばらく残ることがあり、心配なら使えたパスワードを変えて回ります。共有アカウントを Junify に移すと、この作業は要りません。移す日にパスワードを変えて Junify へ登録し、担当者には一度も見せないからです。人が外れたら割り当て(使ってよい人の指定)から名前を消すだけで、誰のログインかは記録で分かります。
参考資料
- Bitwarden Help Center「Password Manager Plans」
- Bitwarden Help Center「Organizations Overview」
- Bitwarden Help Center「Collection Permissions」
- Bitwarden Help Center「Event Logs」
- Bitwarden Help Center「Temporarily Revoke Access」
- Bitwarden Help Center「Permanently Remove Access」
- Bitwarden Help Center「Invite & Manage Members」
- Bitwarden Help Center「Integrated Authenticator」
- Bitwarden Help Center「Autofill from Browser Extension」
- Bitwarden Help Center「About Single Sign-On」
- Bitwarden Help Center「Enterprise Policies」
- Bitwarden「Download Bitwarden」
- 消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(平成 28 年 4 月 1 日改正)
- Junify「Junify の仕組み」
同じテーマの記事
-
1Password と Junify の違い、共有アカウントを担当者に見せずに使わせるときの使い分け
社員それぞれのパスワードを保管して共有するなら 1Password が合います。共有アカウントを担当者に見せずに使わせ、外れた人をパスワードを変えずに止めたいなら Junify が合います。両方を分けて使うこともできます。
-
共有アカウントを管理する道具は、何を確かめて選ぶか
先に、保管・使わせ方・記録のどれを管理したいかを分けます。そのうえで、担当者がパスワードを知るか、誰が使ったかが何か月残るか、人を外すときにパスワードを変えるか、二段階認証のコードを誰が受けるかを確かめます。
-
パスワードを見せない共有設定で、パスワードは守れるか
守れません。LastPass・1Password など 4 社の公式ヘルプはどれも、隠して共有しても、相手が取り出す余地は残ると書いています。共有した相手にはパスワードを渡したものとして扱い、外したらパスワードを変えます。